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省エネ塗料「キルコート」の特許が2つ?
2012年11月29日

 ライツインターナショナルが省エネ塗料キルコートの特許を持っているとの記事を11月21日に掲載した。
 同記事に関し、(株)シンプランニングより、「『断熱方法及び断熱構造』(特許番号2006-141875) は、川手浩氏が所有する特許であり、またその専用実施権設定契約を弊社と締結しているものであります。記事に掲載された『株式会社ライツインターナショナルが取得した特許である』という内容は事実と相違するものですので、事実確認頂き、訂正記事をお願い致したく、ご連絡申し上げます」との丁寧なメールが送られてきた。

 川手浩氏個人が特許を所有しているとの論拠の提示を求めたところ、シンプランニングから、特許出願の記録と、ライツインターナショナルの謄本が送られてきた。その特許出願記録を見ると、確かに、川手浩氏が出願人となっており、発明者の欄に川手氏の名前がある。特許出願番号もライツインターナショナルでの取材時に確認した番号と同じ『2006-141875』であった。

 ところが謄本をよく確認すると、川手浩氏の名前は、シンマテリアル(2012年9月にライツインターナショナルに社名変更)の代表取締役の欄に、その名前がある。12年9月3日に辞任となっている。

 ライツインターナショナルに確認したところ、同社・坂野忠司社長は「もともと川手氏は、うちの社長を務めていた。6年間かけて、会社のお金を使ってキルコートの断熱効果を調べるためのデータ収集などを行なった。100万円程度のコストがかかっている。会社の資金でデータ収集を行なったものを、特許取得の最後の段階で書類を書いて、川手氏が個人名義で特許を取得した。そういうやり方は横領のようなもの。特許は、会社に帰属すると考えている」と、状況を説明した。

 現在も川手氏はライツインターナショナルの顧問を務めており、それに対する報酬も支払われているという。ライツインターナショナルでは、弁護士と相談したうえで、川手氏を特別背任罪で訴える予定。「おいしいものだけ持っていって、娘と娘婿のやっている会社と契約している。世間では通じない」と憤りを隠さない。「会社のものであって、個人のものではない。反論する材料は、いくつも持っている。相手の出方次第になるが、裁判になる用意もしている」と、川手浩氏に対し、正当な法的手続きを取る準備を整えている。

【岩下 昌弘】
 

<解説>特許権 職務発明と通常実施権

 省エネ塗料「キルコート」の特許をめぐって、法的争いに発展しそうな気配だ。
 日本全体で、特許権など知的財産権関係(実用新案、意匠権、商標権などをふくむ)の訴訟は年間約500件が新規に起こされている。
 東芝在籍時にフラッシュメモリを発明した舛岡富士雄氏が対価を請求した訴訟のニュースは、まだ記憶に新しい。
企業に在籍する従業者などが発明者だった場合について、従業者等と使用者等との間の利益調整を図るために、特許法35条が職務発明制度を定めている。職務発明の要件は、(1)従業者等の「業務範囲」内かどうか、(2)発明するに至った行為が「現在または過去の職務に属する」かどうか、が大きなポイントになっている。

 職務発明だったときに争いになるケースでは、発明者の対価請求のほかに、特許権の帰属も大きなテーマだ。多くの企業は就業規則などで、「従業員がした職務発明は会社に権利譲渡する」などと、予約承継を定めておき、あらかじめ紛争を予防しているのが通常と思われる。
 
 また、(株)シンプランニングは専用実施権設定契約を締結しているとしているが、特許権の帰属ではなく、実施権となると、特許法35条1項は、「従業者等」が職務発明について特許を受けたとき、「使用者等」は「通常実施権」を得るとしている。この「従業者等」には、「法人の役員」も該当し、代表取締役も含む。
同条1項の定める通常実施権は、法定実施権であり、登録などの手続きを必要とせず発生する。権利は、開発者のものになるが、会社は無償の実施権を得ることになる。また、この職務発明など法定の通常実施権は、登録しなくても、特許権の転得者に対して効力がある(同法99条2項)とされている。

 企業の代表取締役が発明者だった場合で、代表取締役が特許を受けたケースでの訴訟事例については寡聞のため、今後の展開を待つしかないが、大企業の場合、代表取締役の業務内容からいって、もともと職務発明にあたるケースは少ないだろう。個人事業主に近い中小企業の場合には、代表取締役が開発者を兼ねている会社も多く、そうはいかない。今回の「キルコート」に限らず、だれが特許権や実施権を持つかは、企業にとって死活問題だ。今後の展開を大いに注目したい。

【山本 弘之】
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