ネットアイビーニュース

スペシャリスト(専門家)企業経営ネット

マイナスをプラスに変える「ワーク・ライフ・バランス」~拓新産業の実践に思う
2012年12月 5日

 「仕事と生活の調和」を意味するワーク・ライフ・バランスの普及には、従業員がバランスをとれる働き方を再設計するだけではなく、経営者がワーク・ライフ・バランスを保障するプラスとマイナスをどうバランスさせるかが重要になっている。
 職場環境をよくすることが会社のためにもなると、「一流の中小企業」をめざしている拓新産業(株)の藤河次宏社長の実践は参考になる。拓新産業は、福岡市早良区に本社のある建設用機材のリース会社だ。20数年前、合同就職説明会で自社には1人も訪れなかった屈辱から、「私の会社はそんなに魅力がないのか。魅力のある会社と思ってもらうにはどうしたらいいか」と発奮し、有給完全取得、完全週休2日制に取り組んだ。「大卒なんて来ませんよ」と言われたのに反して、3~4名の採用に対して400人もの入社希望者がいた年も生まれた。

takushin_f.jpg 藤河社長は、福岡市が「仕事と生活の調和」の普及を目的として11月20日に開いたワーク・ライフ・バランスセミナーで講演し、「週休2日や有給完全取得などの社員満足度は、顧客満足度とは違う特性をもっているので一致することはない。プラスとマイナスのバランスをどうとるかだ」と語った。
 週休2日では同業他社と勝負にならないし、有給をきちんと取得させれば、顧客にとっては担当営業マンの休みの日にかち合うこともあり、そこだけを見れば企業にとってマイナスだ。育児休業などを保障すれば、代替要員を確保しておくことになり、育児休業者が出ない期間には余剰人員になりかねず人件費コストの面ではマイナスになる。
 「マイナスもあれば、プラスもある」と話す藤河社長。たとえば、「休日出勤なし」「残業なし」によって、人件費コストを抑えられる。また、事務は事務だけの仕事ではなく、ほかの部署の仕事もできるようした。

 藤河社長は「そのようにマイナスをプラスにする、バランスをとっていく。エンドレスに続く問題であり解決しない。環境が変化するなかでベストでなくベターな選択をしていくことが必要」と力を込めた。
 幹部が率先して有給を取るため、上司不在の際は部下が自分で判断するケースが出てくる。同社では、会社の理念や経営方針など判断基準のものさしとなるものを全従業員が理解できるように研修や社員教育を徹底したのが特徴だ。藤川社長は「ストレートに末端まで伝わっているのを感じる。社員と私との信頼が強くなっている」と言う。

 子育て支援や高齢者雇用促進などの法整備は進む一方であり、企業にとって生じるマイナスをどうプラスに変えるか、拓新産業の実践はセミナー参加者に刺激を与えた。単に他社の事例を取り入れるだけではなく、経営方針、理念の徹底を社員に浸透させて、「加工して自社に落とし込む」(藤河社長)ことができるかどうかが、成功のカギを握ると言える。

【山本 弘之】
新着情報
セミナー開催予定