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社会保険未加入業者を公共工事から排除へ~国交省審議会
2014年1月28日

 健康保険、厚生年金保険などの社会保険に未加入の建設業者を公共工事の元請け・一次下請けから排除する検討が国交省で進められている。1月21日に開かれた国交省の審議会(中央建設業審議会・基本問題小委員会)で、社会保険未加入問題の対策として、当面講ずべき施策を取りまとめて、国に提言された。国交省はNET-IBの取材に対し、「提言をうけて検討中」と回答。今後のスケジュールについてはまだ明らかにしていない。
 2017年度を目途に建設業許可業者の加入率100%を達成するため、経営事項審査の未加入減点幅の拡大など総合的対策を推進してきたが、加入率が企業別で87%、労働者別で58%(2012年度調査)という現状を踏まえて、取り組みの強化、加入徹底をめざすべきだとした。

国交省 同日の審議会では、インフラの品質確保と担い手確保についても講ずべき施策を取りまとめ、指名競争入札から一般競争への移行による受注競争の過度の激化、総合評価方式の拡充による受発注者の過重な負担が生じているとして、透明性、公正性、競争性の確保を前提として、事業の特性に応じた多様な入札方式の導入・活用を提言している。

 未加入業者の公共工事からの排除まで踏み込んだ背景には、東北の震災復旧・復興や2020年の東京オリンピックなどによる建設投資額の増加があげられる。建設投資が活発な時期ならば、社会保険加入による負担を進められるという読みである。加えて、公共事業の原資が税金であり、必要な法定福利費も予定価格に反映されており、建設労働者に配分されないまま「もらい得」になるのを許さない姿勢がある。

 現在、建設業許可時、経営事項審査時に、加入状況が確認・指導されているほか、立ち入り検査では、加入状況の確認にとどまらず、元請け企業には下請けの指導状況の指導も実施されている。下請けガイドラインでは、2次以下の下請け企業への確認・指導も求めている。加入を促進するために、法定福利費が確保できるように、法定福利費を内訳明示した見積書の下請け企業から元請け企業への提出が13年9月から開始され、国では着実に推進されているとみている。

 一方、加入状況を労働者別でみると、元請けでは79%が加入しているのに対し、1次下請けで55%、2次下請けで46%、3次以下で48%にとどまっている。国では、技能労働者の処遇向上、建設業の持続的な発展に不可欠な人材確保をめざしており、今後、公共工事からの未加入業者排除が、2次下請けまで拡大される可能性もある。

 建設業の職人不足が慢性化しており、社会保険料未加入が技能労働者の処遇低下、若年労働者の減少などの原因の一つに挙げられている。建設業の離職率(高卒、3年以内)は、43.7%に達し、製造業の24.4%の倍近い。建設業就業者総数は、この10年間で122万人減少(20%減)、とくに技能労働者数は92万人(23%減)。55歳以上が3分の1を占め、高齢化も深刻だ。また、未加入業者は価格の面で受注競争が有利になり、社会保険加入業者から不公平感が生じている。

 建設業者からは、職人確保や定着のために、公共工事からの未加入業者の排除について歓迎し、好意的に受けとめる声がある。同時に、未加入業者にとっては、社会保険料の事業主負担は頭の痛い問題だ。
 社会保険料負担は、経営上の課題として、未加入業者だけの問題ではない。労働時間管理や賃金制度の見直しにより、社会保険料負担の適正化が図れることがある。制度見直しにあたっては通常、就業規則の作成・変更を伴う。就業規則の作成は、社会保険労務士(社労士)の独占業務であり、税理士、行政書士、コンサル会社などが報酬を得て業として行なうことは社労士法で禁じられている。信頼できる社労士に相談することで、これを機会に社会保険料負担の適正化に取り組んでほしい。

【山本 弘之】

▼関連リンク
・国土交通省・建設業の社会保険未加入対策について
・福岡県社会保険労務士会福岡支部

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