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労働者「無期派遣」へ2015年春施行めざす~厚労省、通常国会に法案提出
2014年2月 4日

 労働者派遣法の改正が再び動き出した。同法の改正を議論してきた厚生労働省の労働政策審議会が1月29日、派遣期間の上限を事実上撤廃する報告書をまとめ、田村憲久厚労相に建議した。厚労省は、建議を踏まえ、今通常国会に同法改正案の提出をめざすとしている。建議は、2015年4月1日施行を求めている。

kourousyou.jpg 報告書によると、派遣期間制限について、労働者個人単位でみた制限と派遣先単位でみた制限の2つの枠組みに改変する。労働者個人としては、同一の派遣先に原則3年以下の上限を設けるが、派遣元で無期雇用の派遣労働者や60歳以上の高齢者などを例外として除外。派遣先単位では、同じく原則3年以下とするものの、労働者個人単位での例外に加えて、過半数労働組合や民主的な手続きで選ばれた過半数代表者の意見を聞いたうえで、人を入れ替えれば無期限に派遣を受け入れられるようになる。

 従来無期派遣が可能だった「専門26業務」は廃止する。また、特定派遣事業と一般派遣事業の区別を廃止し、すべての派遣事業を許可制とする。許可制への移行などに対しては経過措置を設けるとしている。

 派遣労働者に対する雇用安定措置も盛り込んだ。派遣労働者が労働者個人単位の上限を迎えて就業を希望する場合、派遣元に、新たな就業機会(派遣先)の提供、派遣元事業主による無期雇用などの措置を講じるよう求めている。
 報告書は、労働者派遣事業が「労働力の需給調整」に重大な役割を果たしているとの観点に加え、多様な働き方という労働者側のニーズと派遣労働者のキャリアアップ、処遇改善にも目を向けた。努力義務として、派遣される労働者の賃金水準が、派遣先の同種の業務に従事する労働者の賃金水準との均衡が図られることや、派遣元は派遣料金が引き上げられたときには出来る限り派遣労働者の賃金引き上げに反映することを求めた。

 派遣元に無期雇用や新たな派遣先の提供、キャリアアップ措置を求めて、雇用と使用が分離した形態による弊害を防止し、派遣という働き方を健全に機能させようという意図がみられる。

 しかし、正社員との代替が生じないように「派遣は臨時的・一時的」という原則をかかげているものの、全業種で無期派遣を可能にする事実上の政策転換だ。連合は「低処遇を放置したままに派遣労働が拡大する懸念が大きい」と批判している。非正規社員は労働者の約4割に達している。全求人のうち正社員の求人は5割以下。正社員がますます「狭き門」になると懸念される。派遣元に求める措置も実を上げるかどうか、努力義務や指針にとどまれば、実効性は限定的だ。
 国は、建設業界の深刻な職人不足の対策で、公共事業の労務費単価の相次ぐ引き上げや社会保険加入を打ち出している。全業種で「無期派遣」に舵を切ることで、正社員から非正規社員への置き換えがさらに進めば、全産業で人材不足につながりかねない。また、雇用者の所得の低下に拍車がかかれば、「分厚い中間所得層」復活の夢は遠のく。

 国会での法案審議では、労働者の多様な働き方にこたえるとともに、雇用と使用の分離形態から生じる弊害を除去し、「常用代替の防止」や「均等待遇原則」の実効性がはかられるように、法案修正も視野に入れた充実した審議を期待したい。

【山本 弘之】
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