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高精度放射線治療の普及を目指す(前)
2014年5月27日

 現在がんの三大治療とされている「手術」「化学療法」「放射線治療」。そのなかで、体にメスを入れることなく短時間でがん細胞を取り除くことができるのが、放射線治療だ。2014年3月、独立行政法人国立病院機構九州がんセンター(以下、九州がんセンター)が導入したVARIAN製「True Beam STx」は、九州初の高性能放射線治療機器として注目されている。同機器の治療を補佐する新しいCT装置も併せて導入することで、九州がんセンターの放射線治療部門は「高精度放射線治療センター」として新しく生まれ変わった。

<放射線治療のキーワードは「ピンポイント」>
独立行政法人国立病院機構九州がんセンター 九州がんセンターは、国指定の都道府県がん診療連携拠点病院だ。ほかの拠点病院などと連携協力体制をとり、先駆的ながん医療の推進に力を注いでいる。
 2012年に開設40周年を迎えた同センターは、病院の全面的な建替が決定したことをきっかけに、同年「新病院アクションプラン」を策定。目標に「患者さん、ご家族にもスタッフにも優しい、日本をリードする質の高いがん専門病院」をつくり上げることを掲げ、15年の新病院完成と合わせてプランの推進に力を入れ始め、着々と計画を進めている。
 14年3月、同センターが、高性能放射線治療機器「True Beam STx」を九州で初めて導入したのも、そのプランの一環だ。新病院への移転を機会に、旧式の医療機器をできるだけ新型と入れ替えることになり、その先駆けとなったのが、放射線治療機器だったのだ。

 医療機器メーカーVARIAN社の「True Beam STx」は、世界最高の精度を持つと言われる放射線機器である。「ほかの装置の追従を許さないことから市場では『モンスター』とも称されている、世界最強ハイテクマシーンだ」と岡村健院長は言う。日本では希少な機器だが、海外では多くの医療機関で導入、活用され、がん治療の実績を上げている。
 最大の特長は、「ピンポイント」でがん細胞に放射線を的中させることだ。いびつな形状のがん細胞に、放射線をピンポイントで照射させるのは難しい。岡村院長の「放射線治療の歴史は、いかにがん細胞だけに放射線を当てることができるか、その検証の積み重ねです」という言葉がそれを物語っている。「True Beam STx」は、現在、その課題に応え得る最も有能な機器なのである。
 ピンポイント、つまり短時間で、がん細胞をはじめとする小さな腫瘍にX線を的中させるためには、一体何が必要なのか。まず前提として、「放射されるX線の出力レベルが高い」ということが挙げられる。これが低いと治療に必要な放射線量(Dose)を腫瘍に照査する時間が長くなる。一瞬にして適切な量の放射線を当てるのは無理だ。ちなみに一般の機器は500cGy。これより高いレベルが求められる。「True Beam STx」は通常1分間に600cGy、特殊な使用においては1分間に2,400cGyが照射可能だ。

VARIAN社製「True Beam STx」

 次に求められるのは、「腫瘍のレベルに合わせてX線エネルギー高度を選択できる機能」だ。X線は、エネルギーの高度によって何種類かに分かれ、腫瘍の位置や大きさにあったエネルギーを使用することが求められる。その高度が適切であれば、短時間で効果を上げることができる。「True Beam STx」には5種類のX線エネルギーを選択する機能があるので細やか選択が可能だ。これもほかの機器にはないものだ。
 そして照射される放射線の形状を整える機能、「MLC(マルチリーフコリメータ)」の精度も忘れてはならない。いびつなかたちをしたがん細胞の形状通りに放射線を当てるのは至難の業だ。MLCの幅を薄くすればするほど腫瘍形状にうまく当たるようになるが、今まで通常5mmが限度と言われてきた。しかし「True Beam STx」はその半分にあたる2.5mmのMLCを装備しており、より高精度のピンポイント治療が可能。ほかの正常細胞へ放射線が当たる範囲が狭まるので、免疫力の低下や副作用の軽減が期待できる。

(つづく)
【黒岩 理恵子】

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<COMPANY INFORMATION>
独立行政法人国立病院機構
九州がんセンター

所在地:福岡市南区野多目3-1-1
病床数:411床(一般411床)
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FAX:092-551-4585(代表)
URL:http://www.ia-nkcc.jp

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