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高精度放射線治療の普及を目指す(中)
2014年5月28日

<最新CT装置とのコラボが欠かせない>
kengaku2.jpg さまざまな機能を持つ「True Beam STx」だが、同機器単独では最良の治療はできない。腫瘍は呼吸や血流などの生命維持活動によって、常に微妙に体内で移動している。治療の際には、呼吸を止めてもらうなどの負担を患者の体に強いなくてはならなくなる。
 「True Beam STx」の場合は、高精度で細かい形状のX線を放射することができるので、照射時間が一瞬で済み、負担を軽減できる。「肺がんなど、普通は30秒息を止めておくことが求められていましたが、これだと5秒もかからずに済みます」と岡村院長。
 それでも体が動いてしまうこともあるだろうが、前もって後述の新しいCT装置で呼吸位相に合わせたCT画像を併用すれば、移動の範囲を追うことができるようになるので、定位置に合わせて腫瘍を狙い打ちすることができる。
 また同センターでは、「True Beam STx」の導入にともない、新しいCT装置、「Siemens社製Definition AS Open64 CT system The RT Pro edition」も導入した。開口経が広く大きな体格の人でも体輪郭が取れ、64スライスの画像の取得でき、広範囲がスキャンできる。そして「True Beam STx」に合わせ、呼吸位相に合わせたCT画像の作成が行なえる。

 これらの機器がそろうことによって、同院の放射線治療部門は、世界トップレベルの放射線治療を行なうことができるようになった。これを機に同部門は「高精度放射線治療センター」として新しく生まれ変わることになった。
 今までは、脳に転移したがんには他病院へ依頼してガンマーナイフなどで対処していた。しかし「True Beam STx」は、これらの症例にも使用できる汎用機だ。「とくに初期の咽頭喉頭がんは、放射線治療でほぼ改善できます。自由にしゃべれなくなるというのは相当ストレスになるようですから、ぜひ早期発見・早期治療をしていただきたいです」と岡村院長。食道、咽頭、頭頸部などの、できるだけ切りたくないと思われがちながんにはとくに朗報だ。ただ「True Beam STx」での治療に向かないがんはある。消化器系のもの、腸は不定期に動きやすいので手術の方が向いている。

<経済的、心身的にも負担を軽減>
kengaku.jpg ところで、このような高性能の医療機器による治療は、誰でも受けることができるものではないと思われがちだ。たとえば九州には、先進医療を牽引するものとして、佐賀県鳥栖市に重粒子線、鹿児島県指宿市に陽子線のがん治療施設がある。これらは放射線治療とは違って保険適応外となるので、100万円単位の治療費が必要となる。治療費の大部分は電気代だ。どちらも電磁波を使うので、稼働に莫大な電気代がかかるのである。とくに重粒子線は、自家発電できる地域でないと建設するのが難しいほどだ。従って大体原子力発電所がある場所に設置されることになる。

 しかし放射線はX線治療なので、治療自体は保険の適用を受けることができる。重粒子線や陽子線治療に比べれば、10万円以内と、かなり経済的負担が軽くて済む。今はまだ事前のプログラミング処理などに時間を要するので入院治療で行なっているが、症例をこなし、効率を高めれば、通院治療も夢ではないので、心身的にも負担を軽減できそうだ。
 それでも経済的な負担は大きく、がんセンターに行かないと治療を受けられない、という問題は残る。「True Beam STx」は7億円と高額で、一般医療機関が簡単に購入できるものではない。国から定められたがん拠点病院でさえ、高額医療機器の購入が経営的な負担となることを見越して、きちんと減価償却ができるよう計画書を作成し、機構本部の承認を得て費用を借りる。今後は実績を上げて、返金をしていかねばならないのだ。

 がん拠点病院としては、できるだけ良い機器で治療してあげたいと思うのは当然のことだが、それとはまた別に、岡村院長は「このような有能な機器が、一般医療機関で購入できないほど高額だということ自体、問題だと思うのです」と、同機器購入に踏み切った胸の内を次のように明かす。「海外では多くの医療機関で使用されているのですから、手が届かない金額ではないはずです。しかし、日本では医療機器が高額すぎる。日本でも、私たちのようながん拠点病院が実績をつくり、需要を高めることができれば価格が下がるかもしれません。そうすれば、もっと多くの医療機関に導入することができ、多くの方が高精度の治療を受けられるようになるのではないかと思うのです」と。

(つづく)
【黒岩 理恵子】

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