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高精度放射線治療の普及を目指す(後)
2014年5月29日

<できるだけ多くの医療機関での治療可能に>
asahi.jpg 先進医療機器が多くの医療機関に広まってほしい理由は、ほかにもある。3月に導入した際、メディアで紹介された後から、患者からの問い合わせも増えている。このまま同センターへ希望者が集中すれば、物理的に治療をこなすのが無理になる。
 だからこそ岡村院長は、「個人的には、放射線治療をやっているところは、このような良い機械を早く入れて、できるだけ質を上げ、時間やコストに優しい治療が行なえるようにしてほしいと思っています。国の政策でできるようになるのが理想です。直ちに黒字になるような機械ではありませんから、採算が取れるかどうかはわかりません。だからこそ、がんセンターが積極的に導入してメリットをアピールしないと、一般には普及しないでしょう。早く実績をつくり、国や社会に認めてもらって、全国に広まってほしいというのが私の願いです」と語る。
 同センターには「True Beam STx」以外にも、旧型の放射線治療機器が2台ある。先代の機器も有能であることには変わりはない。たとえば08年に導入したシーメンス社製ONCOR。この機器の導入によって、同センターでは初めての高精度放射線治療が定位放射線治療として開始された。実績は、5年間で88症例、106病変に対して施行。全体の2年局所制御率は80%を超えるという実績を上げた。10年には、標的病変に合わせて理想的な線量分布を得られる強度変調放射線治療(IMRT)を開始し、前立腺がん、次に頭頸部や婦人科骨盤内領域に対する治療を開始。13年には52症例に対して施行した。

 だが、「True Beam STx」だからこそ可能な治療というものがある。過去、頭部定位放射線治療も2例施行したが、その際は、固定精度の不安とMLCが5mmで腫瘍にうまくフィットしないという課題を残した。ほかにも、治療時間が長いという問題点があったが、True Beam STxの導入によって、これらの課題が改善し、これまで不得意であった脳転移の患者や呼吸性移動のあるがん病巣など、より多くのがん病巣への放射線治療が精密かつ短時間で可能となった。
 実は今、高精度放射線治療機器を開発している企業がある。「True Beam STx」にはない機能を持った国産の放射線機器となるかもしれない。「しかしそれはいつ世に出るのか、費用がいくらかかるのかわかりません」と岡村院長。それより今ある最新のものを使って、患者さんたちが一番良い治療を受けられる環境をつくることを急ぎたい。これは同センターで働く医療従事者たち、つまり現場の声を反映させた結果でもある。「職員のやる気の問題は、医療現場でとても大切です」と岡村院長。その言葉には、院長という立場からスタッフたちを見守っているからこそ痛感し、実感している「重み」がある。明るい院内できびきびと働く医療スタッフの明るい笑顔、それこそが、がん患者にとっても最良の薬となる。そのためにも、新病院では明るく広々とした院内環境を整えるつもりだ。
 放射線治療も発達してきた。「費用が高い」とか「治らない患者の最後の治療」と思っている人がまだいるかもしれない。この壁を、できるだけ早く取り除きたいと岡村院長は望む。設立記念日である3月15日に開設された「高精度放射線治療センター(True Beam STx)」は、がん治療を望む人々であれば誰でも利用できる。「安価で効果的で、心身への負担が少ないがん治療」を受けることができる社会をつくりたいという、同センター医療従事者の希望の象徴でもあるのだ。

新病院イメージ図

(了)
【黒岩 理恵子】

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