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製薬会社頼みの臨床試験(中)
2014年7月11日

【寄稿】製薬企業の不正問題を考える(2)

独立行政法人国立病院機構
九州がんセンター 院長 岡村 健 氏

img_hakui.jpg 安倍政権は米国のNIH(国立衛生研究所)を参考に、「日本版NIH」構想を打ち出し、臨床試験や研究を支援する組織を設立した。しかし米国NIHの職員数約1万8,000人、予算、年間約3兆円に対し、「日本版NIH」の職員数約300人、予算は年間1,215億円とあまりにも小粒過ぎる。米国とのGDP相当に換算しても、9分の1から8分の1の予算でしかない。そこで、政府はこの組織を具体化するに当たり、米国NIHと同じ組織との誤解を避けるため「日本版NIH」の表現を封印。独立行政法人日本医療研究開発機構(Japan Agency for Medical Research and Developement)A-MED(エーメッド)の呼称に変更した。しかし、この機構だけでは医師主導型臨床試験を支援するには不十分である。根本解決にはほど遠い。医療の進歩は全国民に還元される。したがって、この支援には国費を投入すべきであるが、現在の我が国の借金財政で、これ以上の予算増は期待できない。となれば、広く寄附を募って臨床試験(研究)推進基金(仮称)を設立するか、あるいは継続的研究援助資金を確保する新たな仕組みを考案・導入するしかない。

 ところが、寄附による基金設立については、残念ながら、我が国では寄附文化が醸成していない。OECD諸国を含む36カ国の寄附金額を対GDP比でみると、米国が断突の1位(1.85%)。英国7位(0.84%)。我が国は29位(0.22%)である。さらに、成人1人当たりの寄附金額(年間)でみても、米国13万円、英国4万円に対し、我が国は2,500円とあまりにも寂しい。この現状では寄附による基金設立の実現可能性は低い。とくに一流企業の経営者において、寄附に対する米国との意識の差は大きい。

 例として、米国のがん専門病院のなかで高い評価を受けているベスト5を紹介する。1位のMDアンダーソンがんセンターの設立資金提供者MDアンダーソン氏は綿花取引で財を築いた資産家。2位のメモリアル・スローン・ケタリングがんセンターのスローン氏とケタリング氏は世界最大自動車会社GMの元社長。3位のメイヨー・クリニックは医師のメイヨー兄弟、4位のジョンス・ホプキンス病院のジョンス・ホプキンス氏は銀行家、5位のダナ・ファーバー・B&Wがんセンターのダナ氏はジャーナリスト・慈善家、ファーバー氏は小児科医である。米国では税制上、寄附し易い環境にある。また、スポーツ選手であれ大企業家であれ、自分が財を成し得たのは社会があってこそ、だから大きな資産を築いたら、社会に還元するのが当然という意識、すなわち「ノブレス・オブリージュ;高貴な(富める)者は社会に貢献する義務を負うこと」が根付いているのである。寄附する理由の調査でも、米国や英国では「チャリティは重要」「寄附は正しいこと」など慈善意識が歴史的・文化的に社会に浸透している。

(つづく)

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