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製薬会社頼みの臨床試験(後)
2014年7月14日

【寄稿】製薬企業の不正問題を考える(3)

独立行政法人国立病院機構
九州がんセンター 院長 岡村 健 氏

 江戸時代、米沢藩主、上杉鷹山は「三助:自助、互助、扶助」を奨励。自らも実践して、藩の財政改革を成し遂げた。特に天明の大飢饉では、お互いに助け合うこと(互助)の大切さを説き、富農、富商、藩から米を供出。裕福な町民から援助金を徴収して、大飢饉から領民を救った。東北地方では米沢藩だけが餓死者を1人も出さなかったという。また、先の東日本大震災では国民の多くが寄附している。このように、我が国でも助け合いの精神がないわけではない。ただ、眠っているだけである。米国にできて、日本ができないはずはない。まずは、大災害の時だけでなく、通常時でも資産家が広く社会に還元する文化を醸成することが大切である。しかし、文化の醸成は国の指導でどうこうする性質のものでもなく、事はそう簡単ではない。それでも、それに向けて環境を整えることは可能である。

fukei5.jpg まず、税制改革によって、寄附しやすい環境を作ること。現在の所得控除では、寄附をしても税負担はあまり軽くならない。むしろ寄附と税の二重の負担となる。これでは誰も寄附しようとは思わない。寄附は社会への還元であり、税と同じ性格の公的貢献である。したがって、寄附は税と同じ扱いとして、寄附をすれば税が軽くなる、すなわち寄附を税額控除にすれば、寄附へのインセンティブが働くことは間違いない。また、国や国家機関に寄附する方が、NPOなどへの寄附よりも税制上優遇されている。この国税への誘導政策を止め、医療や社会福祉など公的非営利事業への寄附も平等になるようすべきである。とくに大企業や大資産家が寄附しやすい環境を整備し、進んで社会に還元する機運が生まれてくれば、米国や英国の寄附文化に負けない日本社会になるのではないかと思う。

 今回の不正問題解決の成否は、医療者と製薬企業の経済的依存関係を完全に断ち、医師主導型臨床試験に十分な公的支援ができるかどうかにかかっている。医療は「人間の安全保障」であり、その進歩は全国民に還元される。したがって、国(政府)が医療の重要性を理解・認識し、臨床試験・研究が正道を外さないように改革を断行すること。さらに「ノブレス・オブリージュ:高貴な(富める)者は社会に貢献する義務を負うこと」を奨励。国が制度的にそれを推進し、慈善意識の高い社会へ変革させることによって、医療や公益事業への経済的支援が潤沢になること。これらがこの問題解決成否の重要な鍵である。その結果、寄附文化の社会、さらには上杉鷹山の三助の精神を実践する社会が実現すれば、今回のような問題は自ずと衰退してゆくのではないだろうか。理想論、非現実的、気の長い話、との批判もあろうが、それが有効かつ未来永劫存続する根本的解決策である。

(了)

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