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判決斜め読み~グーグルに削除命じる
2014年10月14日

 10月9日は、最高裁をはじめとする各地の裁判所で、注目する司法判断があった。

 最高裁は、大阪・泉南地域のアスベスト(石綿)を扱う工場の元労働者や遺族がアスベストを吸って肺がんなどになったとして国に損害賠償を求めた訴訟で、国の賠償責任を認める判決を言い渡した。
 大阪地裁は、いわゆる「緑のオーナー制度」をめぐる判決があった。判決は、国有林の育成への出資を募った際に元本割れの可能性を十分に説明しなかったとして、国に約9,100万円を出資者らに支払うよう命じた。

pc.jpg 東京地裁では、日本初とみられる司法判断が示された。インターネットの検索サイト「グーグル」に対し、検索結果の削除を命じた仮処分決定が出された。仮処分決定は、名前を検索すると犯罪行為を連想させる記事が表示され、人格権を侵害していると認めたものだ。
 インターネット上にいつまでも残る個人情報の削除を求める権利は、ヨーロッパで確立されてきている。欧州連合(EU)の「EUデータ保護規則」には「忘れられる権利」を盛り込んでいる。5月にはEU司法裁判所の判決が、グーグルに対し検索結果削除を求める請求を認めた。
 すでに解決した問題や、若い時のヌード写真など、過去のネット情報が人格権を侵害しているとして、削除が認められるのは当然の流れだろう。映画「誰も守ってくれない」(2009年公開)が衝撃的に問いかけた「容疑者家族の保護」という問題は、少年事件の加害者の家族の氏名や写真、住所をネットで公開するというネット社会の問題でもあった。ネット上に氾濫し、拡散する個人情報を制限することは、社会の健全性を維持するために必要になっている。

 グーグルやマイクロソフトは、削除依頼を受け付けるページやツールを設けているが、権力者に批判的な情報が検索サイトから削除されていることを懸念する声が英国のジャーナリストやメディアから出ている。ネット上の情報は、検索サイトに引っかからなければ、砂漠に落とした1粒のようなものだ。ネット利用者の目に留まらず、存在すら知られずに終わりかねない。
 東京地裁の決定やEUの判決は、当然一般市民の個人情報であり、削除の正当性を認めた司法判断に喝采を送りたい。同時に、権力者が「忘れられる権利」を悪用していないか、検索サイトが権力者の要求を"ビジネス"として優遇していないか、ジャーナリズムには新たな監視のテーマが課せられてきたのかもしれない。

【山本 弘之】

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