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酒気帯び運転で免職「重すぎる」
2014年11月14日

yoru.jpg 原付自転車の酒気帯び運転を理由に懲戒免職処分を受けた福岡市水道局の元職員(23)が処分の取り消しを求めた訴訟で、福岡地裁(山口浩司裁判長)は11月12日、判決を言い渡し、「免職処分は社会観念上著しく妥当性を欠いて、裁量の範囲を逸脱し、または濫用した違法」として、同処分の取り消しを命じた。
 判決によると、元職員は2013年9月28日夜、勤務後、福岡市内で飲食などした後、JRで自宅近くの駅に移動し、駅から原付自転車を運転して帰宅する途中、160~180メートル走行したところで酒気帯び運転で検挙された。福岡市は、懲戒処分指針に基づいて、同11月29日付で免職処分にした。

 山口裁判長は、酒気帯び運転の責任非難の程度はけっして軽くないとしつつ、わずか200メートルに過ぎない距離を走行したに過ぎず、事故も発生していないこと、元職員の職責の程度、検挙直後に上司に申告したこと、過去の懲戒処分歴がないことなどを総合考慮して、免職処分を「重きに失する」とした。

 福岡市水道局の事業管理者はコメントを出し、「主張が認められず残念に思っています。今後は、判決の詳細を確認し、対応を検討していく」と述べている。

 福岡市職員による2006年の飲酒運転事故(危険運転致死傷)後、全国の自治体や国で飲酒運転に関連する懲戒処分がおこなわれているが、懲戒処分のあり方、とくに厳罰化に警告を与える意義がある判決だ。一言でいえば、免職しなければ信用失墜を回復できないほど重い行為なのか、処分する前によく考えろ、ということである。懲戒処分できる場合でも、いきなり免職ではなく、減給や停職など軽い処分から段階を踏んでいくべきである。

 今回の判決を民間企業に置き換えて言えば、解雇は無効で、労働者の権利を有する地位が認められたので、その間は仕事をしていなかったけど給料を払うことになる。民間企業なら、株式会社の取締役等の会社に対する善管注意義務および忠実義務(会社法355条)には、会社の使用者としての立場から順守させるべき労働関係法令の履行に関する任務懈怠も包まれているとされているので、不当解雇をした社長は、個人としての損害賠償責任が生じる可能性がある。解雇無効とされた期間の給料を支払わなければいけなかったのは、その分、社長が会社に損害を与えたのだから、社長個人に払わせようという話も生じてくる問題だ。

 民間企業の場合であれば、裁判所に違法とされる免職処分をだれがどのような根拠と判断で行ったのか。それが妥当だったのか。福岡市は検証すべきだ。

 今回の判決は、過去の裁判例に照らしてみても、いたって常識的な妥当な判断である。市が善管注意義務を尽くしていないのに、いきなり免職はリスクが高すぎる。
 懲戒処分は、企業でも公務員でも、企業秩序や公務員関係の秩序を維持するための一種の制裁罰である。制裁を科すためには、懲戒処分の根拠があらかじめ決められ、周知されていて、懲戒できる場合に該当しなければ懲戒できないのは言うまでもない。
 そのうえで、民間企業の場合は、労働契約法15条に権利濫用の懲戒解雇を無効とする規定が明文化されている。公務員の場合は、最高裁の判決で、ほぼ類似の判断基準が確立している。職員の行為の性質や態様、結果、影響、行為前後の態度や過去の処分歴などを総合考慮して、社会観念上著しく妥当を欠いて裁量権の範囲を逸脱し、またはこれを濫用したと認められる場合に、違法となるとされている。
 私生活上の行為の場合、職務命令違反よりも慎重な対応が必要とする見解もある。

 最近の裁判所の判決に照らすと、私生活上の飲酒運転をめぐって、行政側が安易に免職処分を乱発しすぎているという懸念を抱く。
 福岡市は、職員に飲酒禁止令を出し、福岡県弁護士会から人権侵害との勧告を受けている。どうも福岡市は、公私を混同しているように見える。市が日ごろから市民から信用される行政を行っていれば、個々の職員の私生活上の問題行為が自治体の信用失墜に直結するわけではない。私生活上の個々の行為に対する刑事罰や行政罰は、懲戒処分とは別に刑事手続きなどで適正に行われているはずだ。それに加えて、懲戒処分を加える以上、慎重な判断が求められる。ましてや職員に制裁を加えれば、市の信頼が回復するわけではない。福岡市の体面を守るために、安易に職員を罰してお茶を濁すことがあってはならない。

【山本 弘之】

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