ネットアイビーニュース

スペシャリスト(専門家)企業経営ネット

ブラック社員警報発令中(前)~どうする残業代請求・解雇トラブル
2015年1月29日

 最近増えているのが、ブラック企業ではなく、ブラック社員だ。
 労働トラブルが増加している。総合労働相談は年間100万件、そのうち民事上の個別労働紛争相談は24万5,000件にのぼり、裁判や労働審判という訴訟案件に発展した件数も、裁判が年間3,358件、労働審判が同3,719件と、合わせて7,000件以上。毎日2件ずつ日本の裁判所のどこかで訴訟案件が起こされている勘定だ。

office.jpg また、福岡県では有効求人倍率(2014年10月)が1963年の統計開始後初めて1.0倍を超えた。売り手市場になり、思うような人材の採用が難しくなってきたり、応募者が経歴を詐称するなどのトラブルも起きている。ひどいのは氏名を偽るケースもあるので要注意だ。解雇規制の厳しい日本では、問題社員をいったん採用すると労務上の困難を抱えることになりかねない。

 ブラック社員というのはもちろん、個別労働紛争の当事者全員のことではない。「真面目に残業しているのに残業代が出ていないのできちんと支払ってほしい」というのは、当然の要求だ。雇用契約は、労働者が労務提供義務を負い、使用者が反対給付として賃金支払い義務を負う。日本は、労務提供があった時間に応じて賃金を払う「労働時間制度」の国だ。逆に言えば、「ノーワークノーペイ」の原則だと言える。

 繰り返すが、日本は原則として労働時間に対して賃金が支払われ、成果に対してではない。つまり、「ノーワーク」の時間には原則として賃金は発生しないし、「ワーク」した時間には会社は賃金を払わないといけない。

 最近のトラブルで目立つのは、残業代で言えば、その日にやるべきこととして指示された業務がないにも関わらず終業時刻以降も会社にいたケースや、就業時間中に決められた休憩時間以外にもタバコを吸ったりコンビニに行ったりして私的に時間を費やす(労働時間の「中抜け」)とかダラダラ仕事するなどして本来定時に終わる業務が終わらず残業しているケースだ。

 なかには、残業代をあらかじめ自分の生活設計(収入)に組み込んでいて、事業の効率や業務の必要性を無視して、中抜けやダラダラ仕事をして残業代稼ぎを狙っていると思われるケースもある。

 会社が払わなければ、労働基準監督署やユニオン(労働組合)に駆け込んで、自分に都合のいいことだけ話して都合のいい結論を聞いて、「監督署はこう言っていた」と、自分の要求を通そうとする。ネットで「残業代相談」と検索すれば150万件がヒット、「解雇相談」でも約100万件がヒットする。弁護士などの相談無料の法律事務所や相談ホットラインのホームページが見つかり、メールで手軽に法的支援を受けられる。しかも、都合のいい事実しか言わなければ、労基署や弁護士だって法的アドバイスも方向を見誤ることがある。

 これでは馬鹿を見るのは真面目に働いている従業員だ。定時に終わる仕事をダラダラやれば残業代をもらえて、真面目に定時に終わらせていると基本給しかもらえないのではたまったものではない。

 ある従業員が法律事務所に相談したケースを考えよう。
 「毎日、8時、9時まで残業していたのに、会社は残業代を1円も払わない。しかも始業前に毎日30分も仕事をさせられてきたんです。タイムカードがあるんです」――こう相談されれば、なんていうブラック企業だと思うかもしれない。弁護士は依頼を受ければ、「まず請求してみましょう」と、タイムカードの記録通り会社に未払い賃金を請求する内容証明郵便を出すだろう。
 ところが、社長に言わせると、この従業員は、定時前に出社するとすぐタイムカードを押して、やおらスポーツ紙を読み始め、始業時間が来るまで仕事は何一つしていなかった。ヘビースモーカーで、1時間に1回はビルの喫煙室で一服。社長は「仕事中も、会社のパソコンで業務と関係ないインターネットサイトを見てはダラダラ仕事をして、書類作成や管理システムへの入力などの業務が定時で終わらず、いったん夕食を食べに外出し、7時ごろに会社に戻ってきて、昼間と同じようにダラダラと仕事をして8時とか9時に帰っていた。こんな奴に残業代なんか払えん」と話す。

 さて、どちらの言い分が「正しい」のか。

(つづく)
【山本 弘之】

| (後) ≫

▼関連リンク
・山本社会保険労務士事務所IBオフィス

新着情報
セミナー開催予定