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ブラック社員警報発令中(後)~どうする残業代請求・解雇トラブル
2015年1月30日

work_4.jpg 前回見たように、労働トラブルは、どちらも意見としてはそれぞれの言い分がある。紛争解決には、この従業員が悪い、こんな経営者は悪いという善悪論争をしてもあまり有益ではない。しかも、裁判所の過去の判決や労働基準監督署の判断がどうなるかというのは、ほとんど固まっている。

 本来は、ノーワークノーペイの原則なので、実際に働いていない時間に賃金を払う必要はない。ただし、タイムカードがある場合、裁判所や労働基準監督署の判断は会社側が、中抜けや外出を証明しないと、出社から退社まで労働時間にカウントされてしまう。社長の常識は、裁判官の常識ではないことがある。 
 いくら、「従業員がサボって中抜けしていたんです」と言っても、証明できなければ、監督官に「あなたの会社は、従業員が勤務時間中に遊んでいるのを認めているんですか」と言われるのがオチである。

 解雇をめぐる訴訟で、ある社長が従業員がいかに能力不足や問題社員か延々と力説して辞めさせて当然だと述べた後、裁判官から「就業規則の解雇事由に書いてありますか」と聞かれて、「そんな当たり前のことを書いとらん」と答えれば、もうその瞬間に解雇無効という裁判所の判断は決まったも同然である。社長からは、「そんな理屈はおかしいと争ってください。社労士は労働者の味方なんですか」という意見があるが、負けるとわかっている理屈を言っても負けるだけだ。

 もし制度そのものを変えたいなら、「政治買収」が必要なので、100億円では済まないだろう。たとえば、労働時間ではなく成果に応じた賃金制度である「ホワイトカラー・エグゼンプション」(労働時間規制の除外)は、経団連が2005年に提言し、何度か法案化の動きがあり、今通常国会で法案提出見込みまでこぎつけた。年功序列・終身雇用から雇用環境の変化を遂げるには、日経連が『新時代の「日本的経営」』を1995年に発表してから何年かかったか考えてほしい。トヨタや新日鉄、キヤノン並の企業なら、労働法制を変えるのに傾注するのも1つの見識だが。

 目の前の顕在化した紛争に対しては、裁判所の過去の判決という「1番勝てる理屈」に則って勝てる事実(証拠)を揃えることが1番効果的な対策であり、同時に紛争を予防する近道である。

 経営者が次のように思っていたら、これも実は大間違いだ。
「うちは残業代込みで、よそより高い月30万円払っているから大丈夫だ」
「試用期間を1年間とってあるから、その間に解雇してもとやかく言われる筋合いはない」
 残業代未払いに対する労働基準監督署の監督指導、立ち入り調査も厳しく行われており、監督指導による是正企業数(2013年度)は1,417企業 支払われた割増賃金の平均額は1企業当たり871万円にのぼる。厚生労働省は15年1月から長時間労働対策を強化し、月100時間超の残業が行われている事業場等に対する労働基準監督署の立ち入り調査の徹底している。また、働き方の見直しとして、年次有給休暇(年休)の取得促進が取り組まれている。

 長時間労働対策などは今後も強化されていくことが予想される。
 というのは、長時間労働対策の強化は、「日本再興戦略」改訂2014(14年6月24日閣議決定)に、「働き過ぎ防止のための取組強化」が盛り込まれ、同年6月に「過労死等防止対策推進法」が成立し、喫緊の課題とされているからだ。
 「ホワイトカラー・エグゼンプション」(労働時間規制の除外)を導入できるようにする労働時間規制制度の改革案が労働政策審議会分科会(1月16日)に示され、政府は通常国会に法案提出をめざしているが、「ホワイトカラー・エグゼンプション」導入には長時間労働対策が盛り込まれており、長時間労働対策はますます強化されるのは必至だ。

 確実に押し寄せてくる労働トラブルに備えを怠らないことが肝心だ。

(了)
【山本 弘之】

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