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耐震不足マンション訴訟、新局面!(2)~「消防分」があった
2015年8月29日

久留米市に「建て替え命令を出せ」と求める住民ら=8月27日、福岡地裁前 住民の依頼を受けて「新生マンション花畑西」の構造再計算をした仲盛昭二氏(構造設計一級建築士)は、耐震強度不足の結果に絶対の自信があった。「久留米市が問題としているのは、その基になった図面などが『本物』であるかだけ。何か証拠はないか」。
 確認申請書の正本、副本以外に保管しているところがあった。
 通常、「消防分」と呼ばれるもので、消防署が「台帳」として保管している。今回証拠として提出したのは、その写しだ。

 消防署に建築確認申請書や添付図面があるのは、なぜか。
 建築基準法の建築確認は、消防法7条によって、消防長または消防署長の同意(消防同意)がなければ、確認できない。確認申請があると、特定行政庁や指定確認検査機関は、申請書を消防署に送り、消防署は建物の火災予防上、安全を確認するため「消防同意」をしたうえで、申請書を送り返す。ただ送り返すだけではなく、消防署では、消防設備の義務付けられているマンションや商業施設など防火対象物の場合、竣工後の火災予防、定期立ち入り検査に備えるため、原則、建物が取り壊しになるまで申請書や図面を「台帳」として保管しているという。つまり、正本、副本のほかに、もう1つ「消防分」が存在していており、マンションなどの場合、建物がある限り、消防署が保管しているわけである。

「消防分」の存在、市は口つぐむ
 久留米市は、2003年の耐震強度の不足問題が起きて以降、住民側専門家の構造再計算が基にした図面などが、建築確認時のものかどうか不明だなどと言ってきたが、消防署に「消防分」があるのを初めから知っていたことになる。
 久留米市は、管理組合が構造検証した根拠である「副本」が、建築確認時の「本物」かどうか確認しようと思えば、消防署に行って自ら確認できたし、住民らに「消防署に『消防分』があるので、それを基にして構造再計算したらどうか」と助言することもできたはずだが、これまで口をつぐんできた。住民の生命や安全は二の次だというのだろうか。住民らは「不誠実だ」と怒りをあらわにする。

 実は、建築確認時の申請書や図面などは、判明しているだけで、ほかにもう一つある。これも、現在は久留米市が保管している。木村建築研究所が所有していたもので、耐震強度不足が発覚した後、久留米市の任意聴取の際に、市に提出したものだ。
 記者が情報公開請求で入手した図面はほとんどが黒塗りなので、管理組合が保管していたものと照合しても確認する術がないが、久留米市は同一かどうか確認可能だ。もし、誰かがすり替えたとしても、管理組合と木村建築研究所の両方を差し替えるのは不可能に近い。

久留米市の反論はいかに
 久留米市は、ここまでわかっていながら、住民側が構造再計算の根拠とした図面を「信用できない」と言い続けているのである。

 住民側が専門家の支援で、消防本部の保管図面という動かぬ証拠を発掘したため、久留米市を耐震強度があるのかどうか、安全性を満たしているのかどうかの議論に引き込むことに成功した。
 しかし、一級建築士からは「構造検証結果に、反論できないはずだ」という声が上がっている。

木村建築研究所が久留米市に提出した建築確認時の図面(黒塗りは、情報公開のまま)

(つづく)
【山本 弘之】

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