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耐震不足マンション訴訟、新局面!(4)~違反建築物への必要な措置
2015年8月31日

新生マンション花畑西 久留米市が耐震強度について実質的な検証に立ち入らない主張は、一貫していた。

 2013年2月頃、住民側が安全性の検証を求めた際には、久留米市は検証を約束し、「安全なのか知りたいのはわかる。大変重要な問題なので慎重に対応している。仮にアウトになったら、社会的にも問題が大きいし、国交省とも相談しないといけない」(2013年4月9日、本山忠彦建築指導課長)と述べ、同年5月15日には、9月末には検証結果が出るというスケジュールを住民側に示していた。その後、「構造再計算結果の検証はできない」と、態度を一変させて以降、安全なのかどうか、耐震強度が基準を満たしているのかどうかという中身の議論を拒否してきた。

 建築基準法9条、10条は違反建築物や保安上危険な建築物に関し、特定行政庁(建築主事を置く市町村長や都道府県知事)が工事の請負人や所有者に、「除却、移転、改築、増築、修繕、模様替、使用禁止、使用制限その他これらの規定又は条件に対する違反を是正するために必要な措置をとることを命ずることができる」と定めている。
 姉歯耐震偽装物件では、耐震強度50%以下のマンションなどに解体命令が出された。

 今回の裁判では、久留米市は「建築基準法違反建築物であっても除却(解体)命令はあっても建て替え命令はない」「重大な損害を生じるおそれがない」「他に適当な方法がある」などと述べ、「建て替え命令を義務付ける訴訟要件を満たさない」として、「門前払い」を求めた。

 住民側は、「必要な措置」は例示であり、建築物を居住可能な状況に改善する措置が例示されているので、除却するだけでなく建て替えも命じることも認められていると主張。建築基準法9条の目的は単に建築基準法違反の是正だけにあるのではなく「国民の生命、健康及び財産の保護を図る」のも目的なので、違法・危険なマンションを購入させられた住民らの保護のために、施工した鹿島建設に建て替えを命じることができると反論している。

建て替え・除却命令、鹿島が恐れる
施工・鹿島建設をうたった分譲当時のチラシ 建て替え命令や除却命令を一番恐れているのは、実は別訴訟の被告側の鹿島建設らだ。住民側は、元請・鹿島建設、設計・(株)U&A設計事務所、設計監理・(株)木村建築研究所を相手取って損害賠償を求める裁判を起こしている。

 建て替えや除却(解体)を命じられれば、建物の危険性は誰の目にも明らかになる。しかも、建物は、地上15階建て、約100世帯が入居するマンションで、住民は退去する事態になる。
 鹿島の施工に欠陥があったかどうか、損害賠償責任が鹿島にあるかどうかを別として、「技術の鹿島」のイメージダウンは免れない。「設計通り施工しただけだ」と主張しているが、地盤種別の不整合や、鉄骨の柱と梁が15センチ以上離れて緊結されておらず自立不可能など、施工段階で設計図書に疑問を感じないというのは不自然。市民感覚で言えば、常識的に設計ミスに気付くと思われれば、鹿島への不信感は増幅する。いくら元請・鹿島には責任はないと言っても、施工した15階建てマンションが取り壊されてしまえば、そのマイナス効果は「メガトン級」だ。

 鹿島建設らは、住民らが損害賠償を求めた訴訟で「施工者は、建築確認により法令に適合したことが制度的に担保された設計図書にしたがって建築を行う。設計図面に違法があるかどうか確認する義務はないし、現実的に設計図面の内容を一つ一つ確認しながら現場での施工を進めることは困難」として、請求棄却を求め全面的に争う姿勢を示している。

追加提訴、怒り広がる
 住民は、鹿島建設のブランドを信頼してマンションを購入しただけに、鹿島の無責任な対応に怒りが収まらない。原告の1人は、法廷を出ると泣きたい気持ちを押さえて、こう語った。
 「ただ設計図書どおりに建てただけなんて、鹿島を信頼して買った私たちがバカだったんですね」。
 最初の提訴後、原告に加わる住民も増加し、追加提訴した。原告住民は「危険なマンションに暮らし続けるわけにはいかない。マンションが安全になるまであきらめられない」と話す。久留米市や鹿島は、住民の生命・安全にどう答えるのか。9月には、鹿島を相手取った裁判の期日が久留米支部で開かれる。

久留米市が住民側に示した検証スケジュール(2015年5月15日付。住民側提供)

(了)
【山本 弘之】

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