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耐震不足マンション訴訟、鹿島と木村設計の責任は?(4)
2015年9月29日

 鹿島は設計ミスに責任転嫁するが、原告側は決定的な施工ミスによって構造耐力がないことを次のように主張している。
 コンクリートの中性化とそれが引き起こす鉄筋の錆によるコンクリートの爆裂が、建物竣工後わずか2年以内に建物の数カ所に発生している。しかも、鹿島が下請け施工業者を相手取った損害賠償請求訴訟で、鹿島自らが実施した調査結果に基づき、「鉄筋のかぶり厚さ不足」と「コンクリート中性化の異常な速さでの進行」を指摘し、「この建物は危険である」と主張し、そのことを住民らに隠していた--。
 鉄筋が腐食し、鉄筋の強度が期待できなければ、鉄骨鉄筋コンクリート(SRC)造の建物の構造耐力は発揮できず、建物は修復しがたい重大な欠陥を抱えていることになる。

「設計図面に従っただけ」なのか ?
新生マンション花畑西 鹿島は「設計図に従っただけ」と言うが、設計ミスを見抜けなかったのか。

 原告側の専門家、1級建築士の仲盛昭二氏は、設計図で「柱・梁内部の鉄骨が接合されていない」ならば施工が不可能なので、設計図に基づいて施工図を作成し工事にかかる段階で、鉄骨建方工事を担当する下請け業者から疑問が出るし、元請・鹿島が指示を出さないと施工は進まないはずだという。また、「15階建なのに柱脚部の鉄骨が埋め込まれていない」点でも同様に、疑義照会と鹿島の指示抜きに工事は進まないと指摘する。「地盤の設定、柱と梁が接合されていないこと、鉄骨の柱脚部が埋め込まれていないことなど、鹿島が見抜けないはずがない」と反論している。

疑義照会は契約書約款の義務
 鹿島らが締結した契約書では、建築工事契約で広く用いられている「四会連合協定工事請負約款」が使用されており、施工業者の義務も明らかにしている。以下の場合は、「乙(編注・鹿島のこと)は、ただちに書面をもって丙(編注・監理者のこと)に通知する」と定めている。
 ・「図面・仕様書とが交互符合しないとき、または図面・仕様書に誤謬あるいは脱漏があるとき」
 ・「図面・仕様書または丙の指示について、乙がこれによって施工することが適当でないと認めたとき」
 ・「工事現場の状態・地質(略)などについて、設計図書に示された施工条件が実際と相違するとき」

 施工業者が設計図面の疑義を照会するのは契約上の義務である。

医師の処方箋ミスで、薬剤師の責任は?
 設計者と施工業者の関係は、処方ミスにおける医師と薬剤師の責任に似ている。
 医師の処方箋のミスでは、薬剤師は処方箋どおりに薬を出すという単純な確認義務があるだけで、薬剤師は責任を負わない、という単純な話ではない。薬剤師には、国家資格の専門家として、実質的に患者の生命・健康の安全を損なわないようにする責務があり、医師の処方意図を把握し、疑義がある場合に、医師に照会する法的義務があるとした裁判例がある。
 同じように、設計図に疑義があれば、施工業者は設計者に照会し、建物の基本的な安全性を損なわないように施工する義務があると考えるのは当然と言える。

 漫然と「設計図どおり施工した」というのは、施工の実態にも契約書の内容にも合わないし、疑義に気付かなかった鹿島の技術力や施工業者の責務への忠実さ・誠実さが疑われる。

 「私たちは、施工・鹿島というブランドを信用してマンションを買ったんです。名前も知らない工務店のマンションだったら買ってません。一生に一度の買い物、安全な住まいを返してください」。
 住民は、住宅ローンを抱え、いつ倒壊するか不安に脅えた暮らしにあり、泣き寝入りするわけにはいかない。

(了)
【山本 弘之】

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