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マンション管理トラブル~A氏を襲った建物明け渡し請求(後)
2016年3月10日

「オレオレ詐欺かと思った」

 内容証明を受け取ったA氏は驚いた。「もうビックリですよ。最初、オレオレ詐欺かと思いました。でも弁護士からでしょう。じゃあオレオレ詐欺ではないなあ。でも私には、やましいことはなにもありませんから」と、「御通知」を受け取った日のことを振り返る。毎月きちんと契約通りの金額の家賃を払い、水光熱費の請求を受けたこともなかった。
 「車を500万円で買ったら、10年経ってから、相場は1,000万円だったから、差額の500万円払えと要求するようなものです。『私は500万円で契約してちゃんと払いましたよ。今になって1,000万円なんて話が通用しますか』でしょう。弁護士でなければ、脅迫ですよ」。
 管理組合は15年2月、建物明渡や184万円余の支払いなどを求めて提訴したが、A氏が全面勝訴した。A氏は、こう語る。「判決は、相手の請求にまったく根拠がなかったと認めてくれました。『相手の請求はいったいなんだったんだ』という感じです」。裁判などにとられた時間や弁護士費用など、費やした負担への怒りは収まらない。

福岡地裁、管理組合側の請求を棄却

 福岡地裁(松井雅典裁判官)が16年1月、言い渡した判決は、賃貸借契約書に、被告が賃貸部分の水道光熱費用を負担し管理組合の請求に基づき支払う旨の記載が存在するものの、被告が賃貸部分の電気料金を支払う合意が成立したとは認めず、管理組合の請求をすべて棄却した。
 判決によれば、そもそも、賃貸部分に契約当時、電気料金を計測するメーターはなく、水道・ガスは引かれていなかった。被告が電気料金を負担する合意がなかったこと、契約書に上記記載があるものの管理会社が作成した事実、契約当事者が各条項を読んでいなかったこと、被告から受け取る金員が6万円である旨理事会に説明され承認されたこと、被告から受け取る賃料が6万円である旨通常総会で報告され異議が出なかったこと、電気料金計測メーターが設置されなかったこと、14年11月まで原告が被告に電気料金を請求しなかったなどの事実を認定した。
 A氏によれば、14年11月の「御通知」前に、弁護士から事前に問い合わせはなく、電気料金が家賃に含まれていたかどうかの確認もなかったという。契約書の文言は重要だが、約10年間も賃貸借が継続していたのだから、管理組合がA氏と普通にコミュニケーションを図れば、事実や実態に即して、このような訴訟に発展せずに円満解決した可能性がある。
 原告は判決を不服として控訴したが、原告代理人の上鶴和貴弁護士は、本誌の取材に対し、1週間の回答期限が過ぎても、回答がなかった。

管理運営の相談1.5倍に

 マンションの抱えるトラブルは、この裁判例にとどまらない。
 福岡市内を中心に685のマンション管理組合が加入する「福岡マンション管理組合連合会」には、年間約2,000件の相談が寄せられている。相談はトラブルに限定していないが、総会や理事会、管理委託など管理運営関係の相談は、15年には前年の約1.5倍に増えている。
 杉本典夫会長は、円滑で円満なマンション管理運営のポイントについて、「コミュニティが大事です。日常から交流していれば、同じスタンスで考えられる。そして、管理運営の基本ルールをきちんとしておかないといけない」とアドバイスする。また、「マンションは建物の老朽化と居住者の高齢化という『2つの老い』を迎えている」として、「大部分は建て替えが困難なので、修繕だけではなく、改修を視野にして長期の積み立てを真剣に考えないといけない。戸建てと同じく『終の住処』だと思って、知恵を出していく必要がある。そのためには、チームワーク、コミュニティが大事です」と語る。
 マンションの円滑な管理運営には、やはりコミュニケーションが不可欠である。

(了)
【山本 弘之】

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